ワインで10年。
ワインの仕事についてかれこれ10年が経とうとしています。
最初はワインを飲んでも正直美味しいと思えなかった時期がありました。
でも、きっと自分はワインを好きになるはずだという信念を持ってあきらめずに(というよりもワインの営業マンに既になってしまっている以上、好きではないものをお客さんに売れないという思いで半ば強引に)何度も飲んでいるうちにコルディエのマコン(大きくいうとブルゴーニュ地方の白ワイン)に出会ってはじめて美味しいと思うことができ、なんだか人生を救われた思いがして、ワイン道が初めてスタートしました。
それからワインってナンだろうとずっと考えてきました。ワイン業界ってどういうものなのか、そもそもそんな業界があるのか、ワインはいつからできて日本に伝わってからどんな感じで、その市場の成長スピードはどうなのかとか。10年後の未来、100年後、1000年後はどうだろう、ああきっとみんな飲んでいるだろうな、とか。あなたは僕にとって何者なんですか?という質問。
要するに、自分の人生の中で少なくとも1/3を占める「仕事」という時間を捧げるにあたっていったいそれはそれ相応の価値あるものなのかどうかと、いつも考えてきました。 仕事の中身と結婚できない仕事人生はいやだし、その中身を愛せない時間はもったいない。
簡単にいえば、おれはワインを愛せるのか、愛せないのか。もし、ちょっとした感情的に愛することができたとしても、たとえばそれがはかない瞬間的なものだとしたら悲しい。出来る限りに永遠に、おれはワインを愛せるのだろうか。そういう問いがすぐそばにありました。
というのも大学を卒業して最初に就職した先がGMOインターネット株式会社というIT企業でインターネットというたいへんに夢のある仕事でしたが、僕はけっしてその中身まで愛することはできなかったからです。愛している人もいましたが、僕は違った。良いも悪いもなく、ただそれだけ。自分との相性。でもその相性が違うことによって起こる、自身へおそいかかる不幸。それは、軽くいっても、きつい。
なので、かれこれ長い間そんなことを考えてきました。もちろん、そんなことは考えなくてもいいことかもしれないし、 仕事をする以上、お金になればいいのかもしれないし、何をそんな堅くておっさんくさいことを考えているんだお前は、という人もいるでしょう。
でもそこだけは適当には出来ないものでした。
いまもワインを飲みながら書いています。
10年経って、他にもいろいろやってきましたが、
やっぱりワインって「一番いいな」、と思います。
愛せるし、
本気になれる。
損することも多いし、
大成功することもない。
ただまあ、そんなに高いものじゃないから?(ものによる)
いつも身近に置いておける。
そういう自由さがいいのかもしれないですね。